特別天然記念物の指定とその意味
オオサンショウウオが希にみる貴重な生き物であるということで、国の特別天然記念物に指定されていることは、広く知られているようです。触ることも法律で罰せられるはずの生き物なのですが、矛盾を感じる場面に出会うこともあります。「指定のしっぱなし…」にならないことを願いたいものです。
●その経緯
 まず、昭和2年に岐阜県、岡山県、大分県の一部の生息地が、国の天然記念物に指定され、その後、鳥取県での生息地も追加指定されました。
 これらは地域の指定ということで、指定された以外の場所では捕獲してもよいと誤解されることにもなり、昭和26年に、オオサンショウウオそのものが、地域を定めずに天然記念物に指定されました
 さらに翌年の昭和27年には「特別天然記念物」にランクアップされました。

●調査には許可が必要
 天然記念物とは「国の文化財」という位置づけで、文化財保護法により法的に保護されています。もちろん捕獲することは厳禁なので、調査活動をするためには、所轄官庁である文化庁から許可を得なくてはいけません。
 もちろん、我々(大サン会)は正式な許可を得て調査をしていますが、誰でも簡単に許可がおりるわけでもありません。また、許可地域と許可期間も指定されます。
 ちなみに、大サン会では平成8年に、期間3年、地域・豊能郡全域で許可され、平成11年に期間延長(5年)を許可され、平成16年4月からは、エリアを淀川北部に拡大、新たに5年の許可を得ています。また、期間延長などの際には、調査実績などの報告書を提出することになります

●「現状変更」の許可
  この文化財保護法というのは、史跡(遺跡、神社仏閣など)や名勝を前提に作られていて、オオサンショウウオのような生き物を想定していませんし、その保護活動にも重きをおいていません。
 そのため、許可申請も「現状変更許可申請」というもので、オオサンショウウオを捕獲することは、その現状を変更するというわけです。申請書には所有者の氏名や所在地を記入する項目もある始末です。
 環境庁ができた今、野生生物に関しては文化庁から移行して、適切な法律で保護対策をとるべきでしょう。

●知識不十分の教育委員会
 文化庁は文部省の所属なので、都道府県や各市町村においては、教育委員会が担当することとなります。我々の許可申請も大阪府の教育委員会が窓口になりますし、河川で保護された場合には地元の教育委員会に届け出て対処されます。
 しかし、多くの教育委員会ではオオサンショウウオに関しての知識は、きわめて乏しく、適切な処置が不十分である場合が多いのが残念です。

●島根県瑞穂町の例
 オオサンショウウオの保護に、理解も知識も低い行政や教育委員会が多い中で、島根県瑞穂町のような積極的なところもあります。瑞穂町では町起こしも兼ね、町を上げてオオサンショウウオの保護に取り組んでいます。
 1995年には町主催による大きなシンポジウムを開催したり、生態ビデオを製作したり、また、2000年には町立の博物館「ハンザケミュージアム瑞穂」が完成、自然に近い形でオオサンショウウオを観察したり、学習することができます。<ハンザケ自然館の訪問記

オオサンショウウオ自身は、特別天然記念物に指定されていることなど、知る由もない。指定することは簡単だが、それだけでいいのだろうか。
各地の生息地にはこんな看板が立てられているところも多い。
●指定の功罪
  オオサンショウウオを保護するために指定された「特別天然記念物」というレッテルが、オオサンショウウオの生態研究を大きく遅らせているいることも事実です。
 捕獲や解剖、実験などが厳しく規制されているために、研究者による個体確保も難しく、野外での調査にも制約を受けています。
 それほど厳しい規制があるにも関わらず、種の指定で地域指定ではないため、オオサンショウウオが生息する河川の開発行為は、何の規制もなく野放しで行われているのが実状で、生息環境は確実に悪化しています。


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